一条工務店を辛口評価 アイスマート・グランスマート編

ハウスメーカー評価

一条工務店の基礎

基礎の標準は布基礎2度打ちで、地盤調査の結果により軟弱地盤であることが判明した場合にはベタ基礎になります。ベタ基礎の変更差額は建坪×2万円ほどの金額増加となります。ベタ基礎は材料費がかかりますが、布基礎は防湿コンクリートを打設する工程が増えるため手間賃がかかります。そのため、布基礎とベタ基礎は本来そこまで金額に差はないはずですが、布基礎を標準としている一条工務店だからこそ標準外のベタ基礎がそれほどの金額増加に繋がるのでしょう。

基礎の立ち上がり幅は16㎝と十分で、主筋にⅮ16の太い鉄筋を使用しています。普通の主筋はⅮ13で、それよりも太い鉄筋を使っています。鉄筋のピッチも200㎜と高水準です。

コンクリートの設計基準強度が24N/㎟となるので、呼び強度としては27N/㎟となり、これもまた高水準であると言えます。一般的な強度は設計基準強度21N/㎟1で呼び強度24N/㎟です。ベース部分の厚さも19cmとあの積水ハウスよりも厚くなっています。

基礎について一条工務店基礎はハウスメーカーの中でも全体的にレベルが高いといえます。

構造躯体はSPF材

一条工務店の構造躯体はSPF材という腐りやシロアリに対して非常に弱い性質を持つ木材です。それに薬剤などで対策を施し、耐久性を確保しています。

そのため、基本的には10年ごとの防蟻処理が必須です。一条工務店では20年目まで、この防蟻処理を無償で行ってくれます。

しかし、30年目以降は無償でなくなるため、15万円から30万円の出費が必要になります。そこまで大きな金額ではないため、取り立てて問題とはいえませんが、耐久性は薬剤に強く依存しているということは認識しておきましょう。

ただ、枠組壁工法の通常ツーバイで建てられているものは、ほぼすべてがSPF材で建てられているため、一条工務店だけが耐久性に劣る木材を使用しているわけではありません。

断熱性は業界屈指

一条工務店のUa値は業界屈指の0.25w/㎡kです。これはカタログ上の数値ですが、これは少しおかしいように感じます。一般的な形状で解散したところ、Ua値は0.2w/㎡kくらいになります。

硬質ウレタンフォームの経年劣化を加味しても0.22w/㎡kです。カタログ数値を良いほうに盛るのではなく、悪いほうに盛っているめずらしいケースです。実際の数値がよくなる分には顧客として問題ありませんが、比較検討するときに公正に判断できないとも言えます。一条工務店を検討されている方は0.25w/㎡kではなく0.22w/㎡kを目安にするとよいでしょう。

これはハウスメーカーでは最高水準の数値ですので、断熱性に重きを置く人にとっては一条工務店は候補に入れるべきハウスメーカーです。

ただ、他社で達成不可能かと言われるとそんなことはなく、断熱に力を入れているハウスメーカーであれば達成は可能でしょう。

同水準を達成できるハウスメーカーは

・大和ハウス(木造)

・ミサワホーム

・タマホーム

・日本ハウスホールディングス

・土屋ホーム

・北洲ハウジング

などが挙げられます。ただし、いずれもオプション扱いとなるため、費用は増額します。一条工務店の場合も下位グレードにハグミーやアイスマイルなどがあるため、事実上のオプションとも捉えられますが、価格帯としては今挙げた中では最も安い部類になるでしょう。

加えて、一条工務店が充填断熱にも用いている硬質系の断熱材は追従性がないため、地震でずれたり、気密テープがはがれたり、割れたりする場合があります。すると断熱欠損が発生し、本来の性能を発揮できないという問題が起こり得ます。しかし、そのレベルの地震となると、躯体も無事ではすまないと思われるので、断熱材の損傷は些事といえるでしょう。加えて、一条工務店の家は揺れにくい構造のため、硬質ウレタンフォームと相性が良いとも言えます。

耐震性は十分

そして、耐震性についてですがネット上では一条工務店の住宅は全邸許容応力度計算という、最上位の構造計算をしているという誤情報が出回っておりますが、その構造計算を確実にしているのはオプションの「2倍耐震」を選択した場合です。一条工務店のホームページでも2倍耐震「では」許容応力度計算をしていますと明記されています。(2024年4月現在)

もちろん許容応力度計算自体は2倍耐震にしなくても出来るので、通常の商品で許容応力度計算をしてもらったという人がいてもおかしくありませんが、全邸で許容応力度計算をしているは誤りです。

しかし、これからは許容応力度計算を標準化するようなので、耐震性に関しては心配ありません。というより、法改正で許容応力度計算が義務付けられる流れになりそうなので、それに先立って導入してしまおうというだけだと考えられます。

加えて、一条工務店の建物はもともと地震に強いというイメージがあり、さらに2倍耐震の家の追加費用が坪3,000円程度であることからも、許容応力度計算がされていなくても十分に地震に強い家は作れるということであると考えられます。無論、許容応力度計算で安心感を買うことが悪いことであるとは思えませんし、確実性といった側面からもできるならしてもらったほうが良いと考えています。

メーカー品は基本不可

一条工務店は先述した通り、キッチンとお風呂も自社で製造しています。

キッチンは木製になるため、ステンレスキッチン・ホーローキッチン・セラミックトップ・キッチンハウスなどのハイブランドキッチンに憧れがある方は、一条工務店は向かないハウスメーカーだと言えます。

筆者が家づくりを検討し、各ハウスメーカーをまわっていた際、一条工務店でクリナップのステンレスキッチン「ステディア」に変更が可能か確認しましたが、以前メーカー品の導入により問題が発生したことがあったらしく不可でした。

ただ、その一条工務店はフランチャイズであったため、直営店がどうなのかは不明です。ネット上では他社製品の導入についての情報もありましたので、可能なのかもしれません。

ただ、住宅設備メーカーがハウスメーカーに卸す場合と、施主(個人)に卸す場合、値引き率が変わってきますので住宅設備にこだわりがある方は他のハウスメーカーのほうが無難かもしれません。

気密性は上の下といったところ

一条工務店の気密性を表すC値は平均0.59㎠/㎡です。平均ということはそれより悪い数値も平気で出るわけで、厳密な定義はありませんが0.5以下という感覚です。

一条工務店の換気システムは気密性が重要な第一種換気を採用していますので、今一歩といったところではないでしょうか。気密施工はあまり得意ではないのかもしれません。

全館床暖房はすごい

一条工務店は全館床暖房を完備しています。

住友林業や大和ハウスなどの大手ハウスメーカーなどでも、床暖房は1回リビングのみといった提案が主流であり、トイレや脱衣所まで温めるという方針ではありません。(技術的に不可能ということではない)

室内で温度差があるとヒートショックが懸念されるため、一条工務店ではそのような心配とは無縁な生活を送ることができるでしょう。

外壁は光触媒タイル

一条工務店の外壁はハイドロテクノタイルという高性能を謳っているタイルですが、それに限らず結局どのタイルも汚れます。汚れの落ちやすさなどは違うかもしれませんが、吸水率が低い磁器質タイルであれば、光触媒でなくともまず汚れません。セキスイハイムのタイルなどが磁器質タイルになります。

セキスイハイムのタイルが汚れているところを見たことがある人は少ないはずです。もっとも、汚れが目立ちやすいかどうかも、色や材質によりますが。

一条工務店は、ハイドロテクトタイルを坪数×13,000円程度という破格の値段で採用できるため、一条工務店の施主様はこぞって採用します。

そのため、一条工務店の家は外観は特徴的で分かりやすいのです。

ただ、一条工務店のタイルは建物の角に目地が発生してしまうという欠点があります。

その目地は、コーキング処理をする必要がありますし、その部分は経年劣化するためメンテナンスコストがかかります。通常のタイル外壁にそのような目地は発生しないため、角に目地があるタイル外壁で判別可能なのです。付け加えると、1階と2階の継ぎ目はタイルが縦貼りになっており、そこも一条工務店の特徴です。

間取りも単純なため、総じて外観は良くないです。「家は性能」の一条工務店ですので、外観にこだわりがある方は候補から外したほうが無難です。同じく外観に特徴がある積水ハウスや大和ハウスと違って、ハイブランドというわけではありませんので。

ただ、セゾンや百年といった、グランセゾン以外の在来工法の商品はデザインが重視できますが、そちらは性能がアイスマートと比較すると落ちますので、そこまでして一条工務店を選ぶ必要性は感じません。

接着剤の使用量が少ない

タイル外壁における接着剤は、タイルを貼り付けるだけではなく、下地のシーリングや、外打ちの釘を紫外線や雨などから守る働きをしています。

通常のタイル外壁ではその接着剤は下地に直接塗り込み、その後タイルを貼るため、タイルからはみ出るくらい塗られます。

しかし、一条工務店の施工ではタイル裏面の一部にのみ接着剤を使用し、下地や箇所によっては外打ちの釘が露出している下図のような状態です。

これでは、せっかくのタイル外壁のメリットが減少してしまいます。実際、剥離が起きているタイルというのはこのような少量の接着剤を用いた、下地が露出しているものが多いです。

一条工務店のハイドロテクトタイルも例外ではなく、実際に剥離が起きている事例もありました。そのはく離した部分は工場ではなく現場で施工された部分で、さらに下地の継ぎ目部分にあたる場所だったので、それも要因の一つかもしれませんが、一条工務店のタイルの接着方法は好ましくないといえます。

吸水率が高い

ハイドロテクトタイルは吸水率が高く汚れにくいとされていますが、吸水率は3%以下となっており、磁器質のタイルは吸水率が1%以下なので、ハイドロテクトタイル吸水率が高いタイルといえます。

吸水性が高ければ汚れの原因にもなります。実際、ハイドロテクトタイルに苔が付着している画像がありました。苔に対してはセルフクリーニングも機能せず、手で擦って落とすしかありません。

3%と絶対数値としては少なく感じますが、磁器質タイルと比較した場合には約3倍の吸水率があるということになります。パナソニックホームズのキラテックタイルは同じ光触媒でありながら磁器質であり、吸水率は1%以下です。

施工方法も下地全体に接着剤を塗る方式ですので、さしずめハイドロテクトタイルの上位互換といったところでしょう。

太陽光・蓄電池が格安

一条工務店が自社製造している太陽光パネルと蓄電池ですが、ざっくりと200万円強で10kW以上の太陽光パネルと蓄電池が装備できます。

破格の値段ですが耐用年数が短く、その後も太陽光発電による光熱費削減を期待するのであれば20年程度で交換など何かしらの措置が必要になる見込みです。

しかしながら、一条工務店の優れている点は、太陽光パネル自体が屋根の役割を果たしているという点です。太陽光パネルの表面はガラスなので塗装の必要がありません。軽量の釉薬瓦のようなもので、再塗装が必要なく、軽いため耐震性も高い、おまけに発電によって光熱費も削減できる最高の屋根です。

屋根一体型太陽光パネルは一条工務店の特許となっていますので、他のハウスメーカーでは採用できません。一条工務店の唯一無二の強みといっても過言ではありません。

仮に太陽光発電のシステムが壊れてしまったとしても、屋根材として非常に優秀であるということです。

一条工務店の良いところ

①外壁タイル

②屋根一体型太陽光パネル

③全館床暖房

④スケルトン階段(格安)

であると考えます。

デザイン性と間取りの自由度を許容できるのであれば一条工務店は良い選択肢といえるかもしれません。