積水ハウスを選ばなかった理由~鉄骨編~

ハウスメーカー評価

外壁材は結局のところサイディング

積水ハウスの鉄骨造はダインコンクリートという彫の深い外壁材を使用しています。

その外壁材を見た当初はその彫の深さに圧倒され、展示場の中でもひときわ目を引くものがありました。

しかしながら、住宅のことを勉強していくうちに、ダインコンクリートはただのサイディングであることに気が付きました。ダインコンクリートというのはあくまで商品名で、実情はただのプレキャストコンクリート(工場で生産されたコンクリート)で、一般的な窯業系サイディングとの違いは彫の深さ、そして頑丈さだけでした。

彫の深さに意匠性を感じましたが、外壁材が頑丈であることに対してはメリットを感じませんでした。

積水ハウスの実験で、時速150㎞で飛んでくる硬球がぶつかってもびくともしない堅牢さがあるということを実証したものがありましたが、そのような場面は想像できませんし、仮に瓦などが飛んできて外壁に大きな被害があったとしても、風災保険が適用されます。

彫の深さにはわかりやすい高級感があり、魅力を感じましたが、よく見てみると多量のコーキング箇所があり、1階と2階でコーキングの位置がずれている積水ハウスの家を何件も見つけました。

そして、小さな窓がある場合、それに合わせてダインコンクリートをカットするようで、その部分にもコーキングがしてありました。

こんな感じで目地が入ります

そのほかの目立つ場所としては、1階と2階の継ぎ目にもコーキングがありました。そのことに気付いてしまった時、積水ハウスの意匠性の評価はがた落ちしました。築年数がある程度経過した積水ハウスの家を見てみると、まずコーキングから汚れており、継ぎ目がより目立っていました。

結局、我が家は接着剤で貼るタイル外壁を採用しましたが、その理由はコーキングの有無です。我が家の外壁材は14㎜の外打ちの窯業系サイディングに弾力性のある接着剤を塗り、タイルを張っていくものです。そうすると、縦線の目地が発生することがなくなり、意匠性も高く、そして目地のメンテナンスがいらない外壁になります。

加えて、積水ハウスのダインコンクリートは吸水性があり、それを塗膜によって防水加工しているため、塗装が剥げれば塗りなおしが必要です。一方、タイル外壁はそもそも塗装されていないため、塗りなおしの必要がありません。それらの点を踏まえて、最強の外壁材だと思っています。

タイルのデメリットとして、重力に逆らっているという理由で剥離するリスクなどが挙げられますが、普通に一般的なサイディング材ももちろん重力に逆らっているわけで、地球上のものは大体重力に逆らっています。そのような主張は愚にも付かないものであると考えられます。昔ながらのモルタルを使って接着をする湿式工法の場合は、モルタルの経年劣化による接着力の低下により剥離・落下の可能性が高いですし、実際に剥離している現場も見たことがあります。

しかしながら、乾式工法で使われる接着剤の耐用年数を実験して知らべたものがありましたが、少なくとも60年程度は持つようです。それも過酷な環境であればその程度ですが、軒を出すなどして直射日光・および高温になることの対策を施せば更なる耐用年数が期待できます。

さらに、仮にタイルが剥離したとしても、下地には普通の窯業系サイディングが控えているわけで、雨風から躯体を守ってくれます。いわば二重の防壁です。下地は窯業系サイディング14㎜のため外から釘を打つ形になりますが、その釘の部分も接着剤で保護されているため劣化速度は極めて遅いです。

以上をもって、タイル外壁がダインコンクリートよりも優れていると考えます。

ただ、積水ハウスにもSHストーンという接着剤でタイルのように擬石材を張り付けることができます。それは非常に意匠性が高く、タイルと同等以上であると考えますが、コストアップはもちろんのこと、あくまでベースはダインコンクリートで、アクセントとしてSHストーンという形になるようなので結局主体はダインコンクリートということを考えると、外壁材においては総タイルの外壁が勝っているように感じられました。

加えて、SHストーンにはサイディング状のもので継ぎ目が発生する物もあります。そちらはやはり目地がはっきりしており、意匠性を損なっているように感じられます。

建てるので精一杯

積水ハウスは言わずと知れたハイブランドのハウスメーカーです。

周りの積水ハウスで建築されたお宅を見てみると、非常にシンプルな作りのものが多く、建てることで精いっぱいという感じが伝わってきました。

積水ハウスはダインコンクリートとというオリジナル外壁材を最高級外壁と位置付けており、外観にも力を入れております。

しかしながら、建築費用自体が高額となるため、外観の作りこみに予算を回せていないようなお宅が非常に多いように見えました。

インターネット上で見られる実例も、展示場の様な外観とは程遠く、正直同じハウスメーカーのものとは思えないようなものが多く思えます。広い間口と深い軒、大きなベランダ、SHストーンでのアクセントなどがあって初めて積水ハウスで建築したことが活きるような気がします。

坪単価が高いことから、建物の大きさを縮小せざるを得なくなったような実例も多く感じました。

気密性は最低クラス

我が家の建築地は4地域に位置しており、1月の平均気温は0℃というそこそこの寒冷地です。そんな中で建築するにあたり、やはり気になるのが気密性と断熱性です。

積水ハウスの気密性の通常仕様はC値5㎠/㎡で、気密断熱仕様でもC値2㎠/㎡以下を目指すというもの。

我が家のC値はC値0.4㎠/㎡であり、明らかに勝っていると言えます。C値は省エネ性や計画的な換気計画にも影響を及ぼす重要な指標です。鉄骨造の宿命ではありますが、寒冷地ということを加味すると、到底看過できる数値ではありませんでした。

そして、気密施工には坪1万円ほどのお金がかかります。普段から気密施工をしているハウスメーカーでは追加費用は掛かりません。すでに手間代などが本体価格に組み込まれている可能性はありますが、積水ハウスクラスの価格帯で、たいして良くもないC値にするためにお金をかけたくありません。

断熱性は仕様によるが高くはない

新築するにあたって、やはり気になるのが光熱費などのランニングコスト。断熱仕様にもグレードがあり、寒冷地仕様にすれば十分な厚さの断熱材が施工されます。

天井 グラスウール16K 24㎝

壁  グラスウール16K 14㎝

床  押出法ポリスチレンフォーム 13.7㎝

とこの数値を見れば、断熱性能が悪くないことが分かります。

さらに、熱伝導率の高い鉄の周りをしっかりと断熱材で覆うことにより、熱橋の影響を緩和している努力が見受けられます。

ただ、やはりどれだけ高断熱でも気密性があってこそのものだと思うので、両立できない時点で少し評価を下げざるを得ないと思います。

積水ハウスの考え方としても、断熱性を上げるより、太陽光や風などの自然を取り入れて快適に過ごすという考え方でした。

本社を大阪に置く会社なので考え方がやはり温暖地寄りであるように感じられました。

建築地の日射量は多くなく、だからといって夏も自然の風でどうにかできるほど涼しくはありません。はやりある程度は機械の力に頼らざるを得なく、それには気密性や断熱性が重要になってくると考え、積水ハウスではその要望に応えられない、または費用が多くかかるように思えたため、そこもマイナスポイントでした。

結局は軽量鉄骨

積水ハウスの2階建て以下の建物は軽量鉄骨住宅です。鉄骨住宅と言うと地震に強いというイメージがありますが、本当に地震に強い家を作りたいのであれば、重量鉄骨または鉄筋コンクリートで家を作るべきであると考えます。

実際の地震被害を見ても、木造住宅と比較して明らかに優位性があると言えるほどではありませんでした。木造は確かに軽量鉄骨造より耐震性では劣るかもしれませんが、気密性や断熱性に優れているという利点があります。

一方、鉄骨造は軽鉄にせよ重鉄にせよ、気密断熱を取りにくいという性質は変わらず、しかしながら、軽量鉄骨は耐震性においては重量鉄骨に劣るという、どっちつかずの構造に思えました。

シーカスが優秀なのではない

積水ハウスの鉄骨造にはシーカスという制震装置が付いています。

それが地震の揺れを吸収することによって、揺れ幅を抑える働きがあります。ここまで聞くと、制震装置が良いものに聞こえますが、そうではありません。

鉄骨造の構造が制振装置を必ずつけなければならないほど、揺れやすいという性質を持っているのです。

現に、同社木造商品のシャーウッドには制震装置シーカスは入っておりません。つまり、必要ないということです。

制震装置も無料というわけではありません。製造にも設置にもコストがかかっています。それを設置せざるを得ないということは余分なコストがかかっているということになります。制振装置を使用することで、地震に強くなっているような錯覚を起こしますが、木造商品で制振装置を用いず同等の耐震性を確保している以上、余分なものであるという認識となりました。

積水ハウスの良いところ

布基礎一体打ち

積水ハウスの基礎はベース部分と立ち上がり部分を2回に分けて打設するのではなく、両方を一度に打設します。

通常は、2回に分けて打設することによって生まれる継ぎ目部分の脆弱層が生まれず、強度の高い基礎になります。しかしながら、戸建て程度の規模の建築物であれば、仮に二度打ちであっても継ぎ目の脆弱性が問題として顕在化することはまずないということで、二度打ちは許容されてきました。

鉄骨系の住宅は基礎と柱を直接連結させるからか、一体打ちを採用しているところが多いです。そのため、積水ハウスの専売特許というわけではありませんが、二度打ちより一体打ちに優位性があることは確かでしょう。

基礎表面の凹凸

積水ハウスの基礎の立ち上がり部分には凹凸があります。一般的にデザイン基礎と呼ばれるもので非常に意匠性が高いものとなっています。

ダインコンクリートでもそうでしたが、彫が深いものは意匠性が高い物が多く、それが基礎にまで施されているのはハウスメーカーの中では積水ハウスだけです。それに、御影石風の塗装をすることにより、さらに意匠性は高まります。

我が家の基礎も樹脂系塗料で化粧をしていますが、凹凸などはなく基礎単体の意匠性では積水ハウスのほうが優れ散るように感じます。

ただ、平面の基礎であっても、建物の外壁に凹凸に富んだものを採用することにより、対比でより凹凸を際立たせるという手段もあります。それでも、正直なところ、デザイン基礎とフラット基礎のどちらを採用したかったかと聞かれれば、デザイン基礎になるでしょう。

構造躯体の耐久性

積水ハウスのイズシリーズは鉄骨造であるため、もちろん耐久性に優れています。木造と違い、構造体が腐ることやシロアリの被害に遭うことの心配をしなくてすみます。積水ハウスの鉄骨造はカチオン電装塗装を含む3重のコーティンが躯体の主要部分に施されており、その部分の耐用年数は100年と言われています。

しかし、ここで注意していただきたいのが、3重コーティングが施されているのはあくまで主要部分の溶接部、切断部を除く1階の軸柱、下部ベースプレート、下弦材、横桟のみであるということです。それ以外の部分は3重コーティングはされていないということです。

それに関しては、マイナスポイントでした。一部が耐用年数100年だったとしても、それ以外の部分が100年もたなかったとしたら、住宅全体で見たときに100年もつ住宅とは言えません。それでも、木造よりは構造体が傷むリスクが低いということは確かでしょう。

圧倒的なブランド力

積水ハウスの魅力として、ブランド力があります。積水ハウスの名前は住宅に興味がない人でも聞いたことがあり、少し住宅に興味がある人であれば高価格帯のハウスメーカーであることがわかるでしょう。さらに詳しい人であれば、特徴的な外観から積水ハウスで建築した家だと特定することが可能です。ブランド品を身につけることと同様に、ステータスとして積水ハウスは、ハウスメーカーの中では申し分ないと言えるでしょう。