木造住宅の選び方

ハウスメーカー評価

木造住宅は主に3種類

現在、ハウスメーカーは自社の工法に独自の名前を付けておりますが、結局はイメージ戦略の一環であり、3種類または細分化して4種類の工法に分類することができます。ただし、それらの工法をミックスして使っているハウスメーカーもあります。

軸組工法

まず一つ目は最もメジャーな軸組工法ですが、これについては昔ながらの在来工法を採用するハウスメーカーは非常に少なくなっており、軸組工法の派生形であるドリフトピンを使用した金物工法(以後ピン工法)が主流となっております。

在来工法とピン工法の比較要素としてはピン工法の場合、木材を削ってはめ込む在来工法と比較して、欠損が少ない状態で木材どうしを接合することができます。ただ、欠損の差が大きくなるのは通し柱を使用した場合で、最近の在来工法は通し柱を用いず、1階までで終了している管柱のみで構成されていることが多いです。その場合、断面欠損が小さくなりその点におけるピン工法の優位性はなくなります。ただし、接合部の強度としてはピン工法のほうが強いです。しかし、梁の荷重をすべてドリフトピンが負担するため、金物への依存度が強い工法であるといえます。在来工法は、梁が柱の上に乗っかる形となるため金物がなくても梁は落下しません。

ピン工法の別のメリットとしては、職人の腕を問わないことです。プレカットされている木材を所定の場所にはめ込んで、ピンを打ち込むだけなので、極端な話、見習い大工でも全然可能な工法です。一方の在来工法では金物補強の方法が比較的複雑になるため、職人の腕が問われる工法であるといえます。

木造住宅をより工業化・標準化したのがピン工法で、比較的工芸色が強いのが在来工法であるといえます。例えるなら飲食店のチェーン店のようなもので、在来工法は町の定食屋といった感じでしょうか。

チェーン店はどこの店でも無難な味が確約されている。定食屋は店舗によって格差があります。不味い定食屋はチェーン店に及びませんが、おいしい定食屋はチェーン店を超えることもあるでしょう。どちらを好むかは判断が分かれるところです。

枠組壁工法

通称ツーバイと呼ばれる工法ですが、文字通り壁で家を構成します。軸組工法との違いは柱の代わりにスタッドと呼ばれる細い柱のようなものに、面材を打ち付けて壁を構成します。面で構成されており、地震に強いのがツーバイの特徴でしたが、軸組工法でも面材を使用するのが主流となっているため、その優位性はなくなりました。

ツーバイの特徴としては、木材を削ることをしないため、欠損が発生しません。軸組工法は少なからず欠損が起きるため、そこが大きな違いといえるでしょう。金物による補強も最小限になります。

弱点としては、壁の熱橋部が軸組工法と比較して5%ほど多くなるため、断熱性においてやや不利になります。しかし、スタッドの奥行を長くすれば断熱材の厚みを増やすことが可能ですのでその欠点は克服可能です。

この工法も概念としてはピン工法に近く、建築知識や技術がなくても家が作れるように考えられた工法で、規格化・合理化を求めてたどり着いた工法といえます。

ツーバイの派生形として、木質パネル工法というものがあります。基本的な構成は同じですが、壁面をあらかじめ工場などで作成してから現場に搬入する工法がそう呼ばれるようです。ツーバイをより工業化したものと考えられます。

ラーメン工法

ここで言うラーメンはドイツ語で枠を意味します。一般的には柱と梁が一体となっているものがラーメン構造とされますが、完全に一体でなくとも剛接合されたものはラーメン構造と呼ばれます。主に重量鉄骨造で使われる工法ですが、木造でも可能です。ただし、鉄と木造では明らかに強度が違います。重量鉄骨では接合部に脆弱性は生まれませんが、木造ラーメン構造では剛接合部の木が割れたりすることがあります。接合部にかかる荷重も他の工法よりも大きくなりやすく、木材と鉄の強度のアンバランスさに対応しきれていない側面があります。

先述した通り、重量鉄骨で採用される工法を無理やり木材でやってしまおうということなので、どこかにしわ寄せが出てしまいます。どうやっても、接合部の強度の問題で重量鉄骨に勝ることはないのです。木造ラーメン構造が鉄骨と同等以上の耐を持つのであれば、重量鉄骨はお役御免となるでしょうが、そうはなっていない現状が何よりの証拠です。

ただ、重量鉄骨よりは気密性が確保しやすいため、戸建て程度の大きさの建物であれば、コストバランスなども考慮すると、まったく存在価値のない工法とは言えないでしょう。

これもまた、重量鉄骨を手本にしていることから、木造住宅の工業化の側面が強いといえます。

軸組工法亜種 基礎ダイレクトジョイント

軸組工法でピン工法を紹介しましたが、木造住宅の工業化を図ったものです。それにより、柱と梁の接合部を施工の安定性を確保しつつ強固にするものでした。

それに加え、柱と基礎の接合もドリフトピンを使用使用する工法もあります。ドリフトピンの仕様には特別な技術が必要ないため、これも工業化の一環といえるでしょう。

各ハウスメーカーの分布図

各ハウスメーカーが上記の分類のどの位置づけになるのか分類しました。

これを見てみると、ラーメン工法は高価格帯の会社が多く、在来工法やパネル工法は準高価帯の会社が多いです。

ピン工法・ツーバイともに価格差が激しいハウスメーカーが入り乱れる形となりました。

ラーメン工法の会社についてですが、住友林業はネームバリューによるところが大きく、SE工法についてはフランチャイズ形式な上に構造計算も必要なので工法原価とは別の要因で価格が上昇します。

ピン工法については低価格帯のハウスメーカーがこぞって採用しており、大和ハウスや積水ハウスも名を連ねていますが、実は安い工法となります。理由は人件費・手間代の削減にあります。在来工法を扱っている会社がピン工法を採用すれば、基本的に坪単価は落とせます。

ピン工法は金物が高価であると言われますが、ドリフトピンや受け金物の値段を調べてもらえればわかりますが、金物も特別高額というものではありません。

ただ、積水ハウスや大和ハウスは基礎ダイレクトジョイントを採用しており、それに採用される金物は基本的に高価なものになります。一般的なホールダウン金物とアンカーボルトの原価は1000円程度ですが、基礎ダイレクトジョイントに使う金物は8000円になります。

だからといって、柱は基礎に繋がっている柱は数十本なので、差額は20万円にすら届きません。しかも手間賃や技術料は安く済むので、差はさらに縮まります。つまるところ、人件費や技術料をカットできる工法は安いということです。

家は建て方以外にも、断熱材の施工などにも技術を要します。グラスウールは特に技術が必要になります。吹付ウレタンなどであれば、たいして施工力は必要とされないため、ヒューマンエラーは少なくなるでしょう。断熱材の種類についても、より工業化が進んでいるのか職人の手腕に依存しているのか分かれてきます。

ピン工法は熟練の大工が入っている可能性は比較的低く(いても少数)、在来工法はある程度技術を持った職人が来る可能性が高いといえます。グラスウールを採用しているのであれば、熟練の職人に施工してもらう方が安心でしょう。

いずれにせよ、職人の手によって左右されない安定性・工業性を重んじる方には在来工法以外、特に木質パネル工法がおすすめです。職人の手で家を作ってほしいという人には在来工法がオススメといえます。