住友林業を辛口評価 ビッグフレーム工法

ハウスメーカー評価

住友林業の基礎

住友林業の基礎は2種類あり、一つは普通の2度打ちのベタ基礎。もう一つはハーフプレキャスト基礎という特殊な基礎です。ハーフプレキャスト基礎というのは立ち上がり部分をあらかじめ工場などで打設し、ベース部分のみ現場で打設することで、一体打ちと同強度の基礎が実現できるというものです。

住友林業の基礎強度は27N~になることが多く、30Nになるケースもあります。

立ち上がり幅は16㎝で実例では主筋の太さはD16に見えます。ただ、ダブル配筋であったりなかったり、地中梁があったりなかったりというか実例を見る限りはほぼ地中梁はないなので、あらかじめ決められた仕様は立ち上がり幅16㎝だけで、あとは建物の構成により変えていくスタイルのようです。

加えて、ハーフプレキャスト基礎はベタ基礎になるため、根入れの深さが非常に浅く、地面の凍結が心配される寒冷地では採用が憚られます。

こうなると評価基準としては立ち上がり幅しかないので、基礎評価はAでとどめておきます。

住友林業の構造躯体

住友林業の特徴の一つとして、ビッグコラムという独自の極太柱を使用しており、一般的な耐力壁より5倍くらいの強さがあります。

このビッグコラムにより木造でありながら、大開口を可能にしているわけです。

上の図は同規模の住宅を建てる場合に必要な壁量を比較しています。赤線・青線以外のところはすべて窓にできます。

このように同じ間取りでも、住友林業は耐力壁を少なくできるため、大開口が可能になるというわけです。

しかしながら、住友林業が地震に強いのかというのはまた別の話です。

ここまでの話で言えることは、住友林業の「壁」は他社よりも強いということです。

壁が強いというのはいいことのように聞こえますが、「強い壁を少数」という点に着目しましょう。

地震力を受ける壁が少ないということは、地震のときに局所的(強い壁またその直下の基礎)にかかる力が大きいということです。

そして、そのエネルギーは基礎にも伝わるわけですが、住友林業の基礎は通常は二度打ちです。基礎は二度打ちすると、継打ち部が脆弱になり強度が低下します。同じように基礎と柱を直接つなげる工法を取る鉄骨メーカーは強度のある布基礎を一体打ちしています。

通常、構造計算では二度打ちの強度低下を考慮せず、基礎は完全に一体なっているものとして捉えます。

他のハウスメーカーもほとんどは二度打ちですが、戸建て程度であれば基礎強度低下の影響が顕在化しないという理由で許容されてきました。

しかし、住友林業はその特殊な工法により、局所的に基礎にかかる負荷は一般木造メーカーより大きくなり、しかも強度で劣るベタ基礎を使用しています。

一般的にベタ基礎のほうが強いイメージがありますが、それは対不同沈下の話であって、強度があるのは基礎高がある布基礎です。

住友林業の構造計算が二度打ちの強度低下を考慮して行われているものなのか不明ですが、そうでない場合は二度打ちの強度低下の影響が顕在化するリスクは他社より高いと言えます。

ハーフプレキャスト基礎により、その点は改善されるとは思いますが、採用できる場所が限られてきます。

そして、使用されている木材はオウシュウアカマツです。

オウシュウアカマツは耐朽性が高いとされるD1樹種にも指定されておらず、シロアリへの耐性もありません。建築に使用する樹種としては、そこまで推奨されるものではないです。

しかし、ビッグコラムは極太柱なので、多少シロアリにかじられたところで、どれほど耐震性に影響を及ぼすがわかりません。通常の柱がかじられるより強度の低下は低いように思えますが、普通の3.5寸の柱も構造に使用されております。樹種による防蟻性は見込めないと考えられますし、耐朽性もD1樹種でないことから、薬剤ありきで確保するスタイルということになります。樹種単体で見たときの評価はCといったところでしょう。

そして、住友林業のシロアリ対策は建物外周部に埋め込んだパイプに薬剤を流し込む方式です。

メンテナンスサイクルは10年ほどで、1回で10~15万円の費用がかかります。この点も反映こそしませんがマイナス評価です。

住友林業の家は地震に強いのか?

前項では住友林業の耐震性への懸念点を上げさせていただきましたが、他にも懸念点はあります。住友林業は木造梁勝ちラーメン工法という特殊な工法を用いています。

ラーメン構造は柱と梁のみで、躯体を支えます。それに加えて、木ずれパネルというオリジナルの耐力壁を使用していますが、耐力壁は構造の計算には含みません。

木ずれパネルは壁倍率5倍を実現できる高倍率耐力壁ですが、釘を打つ間隔によっても倍率が違ってきますし、ビッグフレーム工法では、あくまで通気目的で使用されているので一概に5倍とは言えません。

そしてそんなビッグフレーム工法は、住友林業の強みでもあり、弱みでもある部分を抱えていると思っていました。

それは、柱の直下率をある程度無視できるという点です。基本的に2階以上の建物の場合は、2階の柱と1階の柱の位置が一致しているほうが強い建物ができます。

思っていました。と過去形なのはシミュレーションソフト用いて実際の地震波のを増幅したもので実験してみましたが、住友林業ほどの壁倍率があれば、柱の直下率を無視できるのもあながち間違いではないことが分かったからです。

しかし、倒壊には至らずとも、損壊の度合いは直下率が高いほうが少なくなったので、出来れば直下率が高いほうが望ましいのは事実です。

さらに、住友林業は耐震等級は型式認定による取得なので、品確法の耐震等級3ということになります。耐震等級にはさらに上位の許容応力度計算に基づく耐震等級があります。とはいっても、許容応力度計算を行うハウスメーカーは一条工務店の2倍耐震の家のみであって、基本的にハウスメーカーは許容応力度計算をしません。それ自体に大きな問題があるとは思いませんが、型式認定は秘匿部分が多く、それにより取得した耐震等級3がどの程度の強度を誇るものなのかは不明です。

積水ハウスも許容応力度計算を始めたという記載がホームページにありましたが、全邸で実施されているのかは判明していません。

断熱性は悪くないが寒冷地に建築する場合は制限を受ける

住友林業の断熱性能は北海道仕様で0.34w/㎡kでよい数値です。ただ、本州の場合窓がトリプルでは無く複層ガラスになります。トリプルサッシとの差額としては建物規模にもよりますが100万円ほどです。住友林業は大開口が売りなので必然的に窓が多くなり、窓の性能を上げるとそれに伴って金額の上がり方も激しくなります。実例を見ても0.48w/㎡kという数値がありました。窓の面積を一般的な割合にすれば当然こうなります。

加えて、床下断熱に使用される押出法ポリスチレンフォームは経年劣化しますので、実際の断熱性はさらに悪くなります。とはいえ床下だけなので有効数字に反映はされないでしょう。平屋の場合や切り上げ・切り下げの境界線上にある場合は別ですが。

そして、住友林業は寒冷地における建築で大きな弱点を抱えています。

それは、最大の売りであるビッグコラムを建物の外周部に設置できないという点です。

その理由は技術的に不可能ということではなく、断熱性の問題です。

ビッグコラム使用箇所には断熱材を充填できません。木はある程度の断熱性があるといっても、断熱材に比べれば全然熱を通しやすいです。先述した通り、外周部に設置した場合の熱橋割合は一般的な軸組工法の倍になります。

そうなると当然断熱性は悪くなります。当家が住友林業と打ち合わせしているときに伝えられました。(建築予定地は4地域でした)

すると、ビッグコラムを建物の内部に設置する必要があるわけですが、強い壁を外周部に設置するのと、内部に設置するのではどちらが強いのか容易に想像がつきます。

そうなると、外周部設置時と同程度の耐震性を確保するためには、多量のビッグコラムが必要となり、費用の増加にもつながります。

そればかりか、ビッグコラム設置個所にはコンセントを設置できません。

だからといって、外壁部にコンセントを設けると断熱性の低下につながりますので、八方塞がりです。

重心がビッグコラムに寄ることで、耐震の中心点である剛心が近くなりやすいという点では耐震面で多少ポジティブにとらえることもできますが、悪影響のほうが大きいです。

ブランド力を出しずらい外壁

住友林業の特徴の一つに高価格帯のハウスメーカーである。つまりはブランド力があるという点が挙げられます。

しかし、住友林業の営業の方も、外観で住友林業とは正直わからないといっていました。

オリジナル外壁であるシーサンドコートですが、それを製造しているエスケー化研でサンドフレッシュという商品があります。シーサンドコートと見分けがつきません。

同じくオリジナル外壁SODOについても提供元のアイカ工業に同じようなものがあります。

他社での施工だとしても、これらを使われると住友林業との違いがわからなくなります。

(積水ハウス・一条工務店・セキスイハイムなどは一目見ればわかることがほとんどです)

他社との判別がつかない(純粋な注文住宅であり、選択肢が多い)ということはメリットであると考えますが、ブランドを誇示したいのであれば「うち、住友林業だよ」と自己申告するしかありません。

外壁の美観的損傷が激しい

住友林業の場合、オリジナル外壁と銘打っているモルタル外壁が採用されることが多いですが、色によっては汚れが非常に目立ち耐用年数が経過する前に塗装するケースも多いようです。

新築時は目地がなく、意匠性が高いモルタルですが、メンテナンス費がかなりかかる可能性があることは認識しておきましょう

リクシルや平田タイルから仕入れたタイルを施工することもできますので、新築時に予算に余裕があるようであれば採用を検討したいものです。

タイルは基本的に塗装は不要なため、メンテナンス費は確実に少なくなるでしょう。

ただ、現実的に採用できるタイルは定価6,600円の安いタイルで、この場合掛け率もいいので全面に施工しても30坪で約100万円です。あくまでモルタル外壁からの差額です。窯業外壁からの差額であればもっとします。

そして、定価13,000円くらいのタイルを施工すると11平米で60万円という情報がありました。

意匠性を重視するなら、定価の高いタイルを採用したいところですが、住友林業の場合はかなり高額なオプションになってしまうようです。

住友林業の気密性

住友林業の気密性を表すC値は0.5~1といったところでした。1を切っているので優秀といえるでしょう。断熱方法も床下断熱で、壁もグラスウールでこの数値はなかなかだと思います。

換気システムは基本的には第三種換気推奨なので、気密・換気については問題なさそうです。

キッチン・洗面台は最上級

住友林業はリクシルの最上位グレードキッチンリシェルSIセラミックトップ、洗面台もリクシルの最上位グレードのルミシスが選べます。

ただ、難点としてはキッチンは壁付けが標準であり、洗面台もボウル一体型の廉価版だということです。

標準仕様ではセンターキッチンになっておらず、センターキッチンにする場合は全面にもパネルが必要になり、ワークトップの面積も増えるためかなりの増額になります。

洗面台も上位グレードのハイバックベッセルタイプに変更した場合、それなりの差額を覚悟しておいたほうが良いでしょう。

実際、キッチンや洗面台はどのハウスメーカーでも同じものが入れられるため、それらを理由に住友林業にこだわる必要はないです。

住友林業の3種の神器

住友林業の3種の神器は一般的に

1⃣シーサンドコート(外壁) 
2⃣ハーモシーリング/スタイルシーリング(木目調の天井)
3⃣格子スクリーン(格子の仕切り)
4⃣ウッドタイル(木目の内壁)

とされていますが、ありていに言えばどこでもできる仕様です。

住友林業はオプションだと追加マージンを取られますので、特別安く施工できるというわけではありません。

1⃣シーサンドコート→エスケー化研

2⃣ハーモシーリング/スタイルシーリング→朝日ウッドテック

3⃣格子スクリーン→YKK AP/LIXIL

4⃣ウッドタイル→楽天市場にたくさん

と代替となるものは全然あるので、安く施工できるというのなら別ですが。住友林業の強みとは言えません。シーサンドコートは標準仕様ですが、窯業系サイディングを選べば安くできますので、実質オプションです。

そこで、新たに勝手に考えた住友林業の三種の神器は

①ビッグコラム

②ハーフプレキャスト基礎

③リシェル&ルミシス

といったところではないでしょうか。

ただ、③に関してはトクラスを選ぶと安くできるようなので、シーサンドコートと同じような感じではないかと思います。つまり実質オプションですが、他社より入りが安いことは確からしいです。