一条工務店で平屋はNG!?

ハウスメーカー評価

一条は平屋でも高性能

タイトルで一条工務店で平屋はNGといいましたが、平屋でも一条工務店は業界屈指の高性能であることは変わりありません。

しかしながら、家の断熱性を表すUa値で語るならば、平屋を建築する場合は断熱業界トップランナーの一条工務店と、他社との差が詰まってしまう傾向にあります。

一条工務店の強みは、トップクラスの性能を有している家なのに、比較的低コストで家を提供しているところです。

断熱性は大手ハウスメーカーを優に凌ぎ、耐震性でも劣らぬ性能を持ちます。

つまるところ「この性能(断熱性)なのに、このお値段」が一条工務店の唯一無二の強みなのです。いうなれば他社と性能・値段を比較した時の「割安感」です。

しかし、それが平屋となると薄れてしまうからくりが、いったいどのような理屈なのか、次項より解説していきます。

平屋と二階建てのUa値比較

まず初めに、一条工務店は外壁の断熱に力を入れているハウスメーカーだということを認識しておきましょう。

一条工務店の部位ごとの熱の通しやすさを数値で表すと以下の通りになります。

天井 熱貫流率U値 0.13

壁 熱貫流率U値 0.13

床 熱貫流率U値 0.16

普通のハウスメーカーは一般的には一番断熱性能が優秀なの部位は天井になり、次に床、最後に壁となります。

住友林業を例に出すと

天井 熱貫流率U値 0.11

壁 熱貫流率U値 0.46

床 熱貫流率U値 0.35

※断熱材は住友林業の仕様で熱橋部は一般在来と同じ割合で計算しています。

となり、数値が低いほど優秀ということになりますが、天井の性能が圧倒的に良くて、壁が一番悪いことを示しています。

一条工務店で優秀なのは天井と壁で、少し劣っているのが床となります。つまり、他社と比較して外壁と屋根と床の熱貫流率の差が少ないということです。※床の熱貫流率には×0.7の補正がかかります

一条工務店で、ランニングコストを他社と比較した時により削減したいのであれば、外壁の面積を増やすことが同じ間取りであれば他社と光熱費で大きな差をつけられることになります。つまりそれが二階建ての家になるわけです。

上の例で比べると

住友林業 総二階0.36 平屋0.30

一条工務店 総二階0.17 平屋0.17

※どちらも延床面積30坪を想定しています。

となり、住友林業の性能が0.06よくなっているのに対し、一条工務店はよくなっていません。

住友林業の数値がよくなったのは、熱貫流率が優秀な屋根面積の割合が増え、欠点である外壁の面積が減ったからに他なりません。

加えるなら、一条工務店のアイスマート・グランスマートで使用される断熱材である、硬質ウレタンフォームは経年劣化が激しい断熱材です。

直射日光に触れることでも、性能が大きく劣化しますが、直射日光に当たらずとも断熱材に含まれているガスと空気が入れ替わることで3年以内に性能が25%ダウンすると言われている断熱材です。とはいえ、Ua値に反映されるのはその時点でも0.02数値が悪くなる程度ですが。

すると、さらに差は縮まることになり、一条工務店のストロングポイントである断熱性に大きな差が生まれなくなってしまいます。

これが、一条工務店で平屋を選択すべきではない一つ目の理由です。一条工務店がダメということではなく、一条工務店を選ぶメリットが他社と相対的に断熱性の差が縮まってしまうといったほうが語弊がないかもしれません。

格安タイルの面積が減る

一条工務店のハイドロテクトタイルは、坪13,000円。二階建ての外壁の平米単価に換算すると{13000円÷3.3㎡(1坪の面積)÷1.2㎡(簡易的に坪数から外壁面積を割り出す補正係数)}となりおよそ3,300円で施工できるハウスメーカー屈指の激安タイルです。性能面も悪いわけではなく、唯一の弱点を挙げるとするのなら、角の部分に目地が発生してしまうことによる美観的欠点と、その目地の打ち替えにかかるメンテナンス費用くらいです。

これについても、外壁面積が増えれば格安タイルの面積も増えて、他社よりお得感がありますが、外壁面積が減ることで、他社の外壁タイルと総額が縮まります。

といっても、タイルの施工自体が他社の場合はまともなタイルを使えば安くても坪5.5万円程度はしますので、一条工務店のほうが安いことには変わりありません。

30坪の場合

一条 二階建て50万 平屋33万

住林 二階建て210万 平屋138万

となり、二階建て時の価格差が160万円なのに対し、平屋の時は105万円となり、差が縮まってしまいます。

繰り返しになりますが、これはあくまでお得感の話で、激安タイルを施工できるなら範囲が広いほうがよりお得というだけです。

一条工務店の強みである外壁タイルを最大限活かすのであれば、外壁面積が増える2階建てであるということです。

他社の場合は、お金がかかりやすい外壁面積を減らすことによって、コストの削減にもつながります。ただし、基本的に同じ坪数なら平屋のほうが高くなります。2024年現在では生コンの価格が上昇しており、基礎が増える平屋はより割高に感じるかもしれません。これは、一条工務店とその他ハウスメーカーに共通して言えることです。

平屋は自由度が活きるのに一条には限界がある

平屋は耐震性が二階建て以上の建物と比較して高くなるということは想像に難くないと思います。

そうすると、二階建てと比べて一階部分の間取りの自由度が上がります。柱の直下率なども気にする必要もなくなります。

ただそんな中、一条工務店が枠組壁工法という点がマイナスとなります。枠組壁工法(通称ツーバイ)は間取りの自由度に関しては軸組工法(通称在来)に劣ってしまいます。

例えを挙げるなら、在来であれば柱を1本建てれば済むところが、ツーバイには柱という概念がないため、柱ではなく壁が必要になります。

平屋であれば、耐震性の懸念はあまりなく、自由な空間が実現しやすいです。

それがより活きるのはツーバイではなく在来です。鉄骨造であればさらに自由度が上がりますが、断熱性や気密性を犠牲にすることになります。

一条工務店で建築を検討される方のほとんどは、断熱性に重きを置いていると考えられるので、鉄骨造は選択肢から外れてくるでしょう。

一条工務店で平屋を割安で建てるには?

一条工務店で平屋を建てる際の最大のデメリットは外壁面積の割合が減ることです。

では、その面積を増やしてあげれば、そのデメリットは解消されます。

その方法はコの字型のような複雑な形の家を作ることです。それにより外壁面積が増えて、2階建ての時と同じような割安感が手に入ります。

ただ、ここで気を付けてほしいのは、他社と比較して割安であるということです。

一条工務店であろうが、他社であろうが、平屋にすれば坪単価は上がり、そして形を複雑にしても坪単価は上がります。そして、家の表面積が増えることで、省エネ性は下がり、程度によっては平屋であろうとも耐震性に問題が発生する可能性があります。

省エネ性を求めて一条工務店を検討しているのに本末転倒ということになります。

やはり、一条工務店で建築するのであれば総二階がベストであると考えます。

総二階はデザイン性の観点から難があることが多いですが、一条工務店でデザイン性の高い家は厳しいですし、特徴的な外観のため一条工務店である(外観は度外視している)という目で見られてしまう可能性もあります。

一条工務店のコンセプトは「家は性能」です。平屋で外観も省エネ性もという方には、いささか向かないハウスメーカーであると言えるでしょう。