住友林業は地震に強いのか?

ハウスメーカー評価

住友林業の特徴とは

住友林業の多いな特徴は、木造でありながら、ラーメン構造を採用している点です。ラーメン構造とは「枠」を意味し、太い木材で箱の枠をつくり地震に耐えることを指します。

地震に耐えるには耐力壁が必要です。耐力壁とは、柱などに構造用合板などを張り付けることで、作られますが、住友林業では集成材という木材を接着剤で貼り合わせたものの、極太バージョンを用いています。それは通常の耐力壁の5倍の壁倍率があるとされています。

つまるところ、極端な例になりますが、通常の木造住宅では5mの壁を設置しなければならないところ、住友林業では1mですむということです。

そこで懸念されるのが、住友林業のやり方では、地震が起きた際に、その負荷を極太柱が局所的に受けることになり、その部分の破断が早まり、地震に耐えきることができないのではないかということです。

このような工法を取っているのは住友林業の他にNCNが提供するSE工法が挙げられます。

他にも、積水ハウスや三井ホームもこの工法を採用することができます。

接合方法などに多少の違いがありますので、ここでは一般木造住宅のように耐力に劣る壁を全体的に配置した場合と、局所的に強い壁を配置した場合ではどちらが強いのかということについて論じたいと思います。あくまで、建物全体としての壁量は同じにして比較します。なので、住友林業の壁倍率22.4倍相当と比較したわけではありませんのでご留意ください。

結論 全体に配置したほうが強い

シミュレーションソフトを用いて壁を全体に配置した建物と、局所的に強い壁を配置した建物を阪神淡路大震災の1.5倍の地震波で両者を揺らしてみました。どちらも建物全体としての壁量は同じです。

すると、全体に配置したものは1回目の地震には倒壊せず耐えることができました。

しかし、局所的に壁を配置したものは早々にねじれて大破してしまいました。

この結果から、壁は全体にバランスよく配置することが理想的であるといえます。しかしながら、弱壁全体のほうを見ていただくと分かる通り、玄関や窓などの開口部がりません。家も完全な正方形で、ここまで都合のいい家は存在しないでしょう。

一方、強壁のほうは強固な耐力壁を局所に置いただけなので、現実味があるといえます。

あくまで、ここでは弱い壁を全体に配置した場合と、強い壁を局所的に配置した場合の比較なので、リアリティーは度外視しています。

どちらも「正方形の二階建ての箱」という時点では一枚一枚は弱くても壁を全体に配置したほうが地震には耐えられるということでした。

開口部を設けるなら話は別

先述したシミュレーションは窓や玄関ドアなどの開口部が無く、全ての耐力壁がガッチリと接合した状態での結果でした。しかしながら、実際の住宅ではそんなことはあるはずもなく、開口部の関係で、耐力壁を全面に貼ることではできません。

そうした場合、どうなるかを様々な方法で検証しました。

まずは、阪神淡路大震災の1.8倍で揺らしたところ両者倒壊

阪神淡路大震災の1.5倍で2階揺らしたところ、両者倒壊

阪神淡路大震災の1.7倍で揺らしてから、1倍で3回揺らしたところ両者倒壊せず

という結果になり、実情としては完全にイーブンという結果になりました。

ただし、損傷の具合から見ると、強い耐力壁を局所的に配置した場合、その部分の損傷が大きくなって一部破断する形となりました。しかし、繰り返しの揺れでも他の耐力壁が踏ん張り、破断した後でも一定の耐震性を示しました。無論、全体に配置した場合も無傷というわけではなく、建物全体の傾きなどから見るとほぼ同等の損傷が見られました。

このことから鑑みるに、耐震性という点において、高倍率の壁を少数設置した場合と低倍率の壁を多数設置した場合の耐震性は互角だが、やはり局所的なダメージにおいては高壁倍率のかべを少数設置したほうが大きいといえます。

ただし壁の位置によって耐震性は変わる

同じ壁量でも、それをどこに設置するかで耐震性は変わります。

例えば住友林業でよく見る、建物の角が両面窓になっている間取りをよく目にします。

このような場合、建物の角には柱が1本しかたっておらず、耐力壁がない状態です。

そこで、シミュレーションソフトで壁を角に配置しない間取りで実験しました。

両者の壁面積は同じにしましたが、真ん中に耐力壁を配置した方は、角に耐力壁を配置した建物が耐えられた地震で倒壊・大破してしまいました。

このことから、高倍率の耐力壁を使う場合は、配置により一層気をつけなければなりません。一般的な木造住宅であれば、角に窓を配置するような冒険はしないでしょう。壁量計算で同じ数値を出しているのにもかかわらず、配置によって差が出ることを留意しておきましょう。

とはいえ、中央に配置した場合でも、品格法で必要とされている耐震等級3はクリアできていましたので、より高耐震を求めるのであれば、耐力壁は角に配置するべきだといえるのかもしれません。

柱の直下率を無視できるはあながち嘘ではない

柱には直下率というものがあり、1階と2階の柱の位置がどれだけそろっているかという指標です。

直下率は高いほうが望ましいですが、住友林業の梁勝ちラーメン構造では柱の直下率を無視できるというのです。

要するに、図のように1階部分と2階部分の柱がずれても問題ないよということです。

シミュレーションをする前までは、そんなことありえないと思っていましたが、事実、直下率100%と0%で比較たところ、倒壊に至る震度に差はありませんでした。

この点において、住友林業および木造ラーメン構造を採用している各社は自由度が高い間取りを実現できるということは確かであるといえます。

しかしながら、倒壊に至る震度は同じでも、損壊率は直下率が低い建物のほうが高く、損傷は激しくとも倒壊はしないという状態になりました。

やはり建物の損傷を抑えるという観点から言えば、直下率は高いほうが有利なようです。

ビッグコラムの注意点

これまでは、ビッグコラムに問題点がないように見えます。しかしながら、住友林業は寒冷地においては大きな弱点を抱えています。

その理由は、ビッグコラムを建物の外周部に設置できないという点です。

理由としては熱橋部の増大にあります。住友林業がビッグコラムに使用するオウシュウアカマツなどのマツ科植物の熱伝導率は0.12ほど、一方、断熱材で多く使用されるグラスウールの熱伝導率は0.036程度です。断熱性能に大きな開きがあります。そして、住友林業は開口部を大きくとることを得意とするメーカーです。窓の断熱性はさらに低く、窓を増やせば増やすほど断熱性は悪くなります。すると、省エネ性を大きく欠くこととなるため、ビッグコラムを外周部に設置することができないのです。

そこで、高倍率の耐力壁を建物の内部に設置した場合どうなるかを検証しました。

すると、壁量計算では耐震等級3をクリアしているにもかかわらず、阪神淡路大震災の1.5倍の揺れで倒壊してしまいました。(ただし、阪神淡路大震災の等倍の揺れでは大きな損傷もなかったため、一定の耐震性能は確保しています。)

至極当然のことですが、耐力壁は外周に設置すべきものであります。そのため、住友林業は寒冷地における建築において大きな弱点を抱えているとも言えます。

しかしながら、温暖地においては耐震性を確保しつつ、大きな開口部を設けられるため、パッシブハウスのような設計が可能となります。

住友林業並びにSE工法といった、ラーメン構造を主軸としているメーカーは温暖地でこそ真価を発揮できるといえるでしょう。