瓦屋根やタイル外壁は地震に弱い?

ハウスメーカー評価

今回はシミュレーションソフトを用いて、同じ建物で

瓦屋根・タイル外壁

ガルバリウム屋根・タイル外壁

瓦屋根・サイディング外壁

ガルバリウム屋根・サイディング外壁

という4パターンで実際の地震波の何倍まで耐えられるかという実験を行いました。

結果:瓦屋根は地震に弱い

その実験によって導かれた結論は瓦屋根は圧倒的に地震に弱いということです。

以下、実験の結果を記録します。なお、実験に用いた地震波は阪神淡路大震災のものです。

瓦屋根・タイル外壁→1.7倍で倒壊

ガルバリウム屋根・タイル外壁→2倍で倒壊

瓦屋根・サイディング外壁→1.8倍で倒壊

ガルバリウム屋根・サイディング外壁→2倍で倒壊

という結果になりました。

予見した通り、瓦屋根を採用したものは総じて地震で倒壊しやすいという結果になりました。これまた、予想通りですが瓦とタイルの両方を採用した場合、総重量が他の建物に比べて重くなりやすく、1.7倍の地震波であっという間に倒壊してしまいました。

瓦屋根とサイディング外壁を用いた場合でも、大きな差はなく1.8倍の震度で倒壊してしまうという結果になりました。これらの結果から、屋根が重くなるのは地震に対して不利に働くのは間違いないでしょう。

無論これは、屋根や外壁の重量以外は同じものを採用した場合ですので、瓦屋根を採用する場合に、耐力壁を増やしたり、壁倍率自体を上げるといった対策を取れば倒壊する震度を引き上げることは可能です。しかし、同じ強度であれば屋根は軽いほうが圧倒的に地震に強いです。

そこで心配になるのは太陽光パネルです。

太陽光パネルは平米あたり12㎏の重さがあります。一般的な家庭に設置する場合、300㎏程度のパネル量になることが多いです。300㎏と聞くとかなりの重さが屋根に乗ることになるように感じられますが、屋根面積で割ればそこまで大きな荷重にはなりません。地震の弱さに寄与することは間違いないと思われますが、それが甚大であるとは言い切れません。たとえ、瓦屋根に乗せたとしてもそこまで大きな影響はないでしょう。

タイル外壁は地震に強かった

今回の実験で意外だったのは、タイル外壁が地震に対して強いということが判明した点です。

タイル外壁は、家の重量が重くなる大きな要因の一つです。タイル自体の平米あたりの重さは瓦の半分程度ですが、屋根と外壁の面積は大きな違いがあります。それでも瓦はガルバリウムと比較して重すぎるため、瓦を採用したほうが総重量は若干重いですがガルバリウム屋根+タイル外壁を採用した家全体の重量と大きな差は出ません。

それにもかかわらず、ガルバリウム屋根とタイル外壁を採用した建物では、ガルバリウム屋根とサイディング外壁を採用した建物と同程度の地震に耐えることができ、さらに驚くべきことに、条件によっては建物の損傷もタイル外壁を採用した建物のほうが少ないという結果になりました。

その理由を考察すると、建物の重心が下がったことが原因のように思えます。しかし、タイルの重量を上げて計算した場合、タイル外壁を採用した建物のほうが倒壊率・損傷率ともに高くなりました。

サンプル数が少ないため断定はできませんが、一定の重量までタイル外壁は耐震性において有効または許容できるが、臨界点を超えると耐震性に悪影響を及ぼすという仮説が生まれました。

いずれにせよ、タイル外壁が地震に対して明確に有効であるといえない以上、少しでも耐震性を上げたい場合は採用しないほうが無難といえるでしょう。

住宅における最強の組み合わせ

タイル外壁や瓦屋根を採用したい場合、意匠性を気にしてということも考えられますが、メンテナンスコストを気にして採用されることも多いです。

タイル外壁と瓦屋根はともに塗装が不要であり、住宅のメンテナンスにおいて確実に必要で、高額な再塗装の必要が無くなります。

ランニングコストを考えた場合、どちらも採用したい外装材です。しかしながら、どちらも重い素材でできており、耐震性が損なわれてしまう危険性があります。そうした場合、バランスを考えて採用することが大切です。

意匠性は無視し、耐震性とメンテナンス性を考えた場合、タイル外壁は採用し、瓦屋根は採用しないというのがベストであると考えます。

まず瓦屋根の1番のデメリットは耐震性の低下ですが、メンテナンス性においても大して優れているものでは二と考えられるからです。

瓦自体は、塗りなおしの必要がないメンテナンスフリーですが、雨から家を守っているのはルーフィングという瓦の下地である防水シートです。この防水シートは良質なものでも20年に1度はメンテナンスが必要です。

そうなると、1度瓦をよけて葺き直しが必要で、その手間賃でかなりのお金がかかります。そうなると、メンテナンスフリーを望んで瓦屋根を採用する意味が無くなると考えられます。

加えて、再塗装が必要なガルバリウム屋根の場合も、外壁に比べると塗装費用は安くすむため、屋根についか費用を掛けてまで瓦にするメリットはあまりありません。

一方、外壁タイルは重量にもよりますが、耐震性にそこまで大きな影響を与えず、メンテナンス性も向上するため、採用に値する外壁材です。

現在のタイル外壁は昔と違い高性能な接着剤で貼り付ける工法を取っているため、耐久性も非常に高いです。メーカーの実験によると、過酷な環境でも60年の耐用年数が期待できるようです。

ただし、トータルのコストパフォーマンスで言えばガルバリウム外壁のほうがメンテナンス性においては優れているように思えます。

そのため、瓦屋根・タイル外壁は意匠性ありきであり、特に瓦屋根を採用する場合は耐震性に要注意です。ハウスメーカーは基本的に壁量計算しかしません。それには壁の配置バランスなどは考慮されませんので、瓦を採用する場合はかなり慎重になるべきであるといえます。

なお、通常の瓦は吸水性が高く汚れやすいです。汚れが付かないようにするにはガラスコーティングが施された釉薬瓦を採用するべきでしょう。