シャーウッドの基礎
積水ハウスは木造住宅の基礎も布基礎一体打ちを採用しています。一体打ちとは基礎のベース部分と立ち上がり部分を一度に打設することで、本来であれば発生してしまう継打ち部の脆弱化を防ぐことができます。
立ち上がり幅は160㎜・フーチング厚は180㎜以上でベース下端から立ち上がりまでの高さも760㎜と十分な高さです。基礎高が高ければ、シロアリや湿気から住宅を守ることができます。
主筋も一般的な13㎜のものより6㎜も太い19㎜の鉄筋を使っており、配筋ピッチも200㎜と高水準。アンカーボルトもM22と太いものを使っています。基礎の強度という点ではハウスメーカー屈指で木造では最高水準です。
意匠性に関しても基礎の表面がデコボコしており、そこに御影石風の塗装を施すことでさらに見た目が良くなります。それだけで他社と区別がつきやすく、積水ハウスというハイブランド住宅を建築したことを周知させることができます。
使っている建材はホワイトウッド
ハイブランドのイメージがある積水ハウス。その木造住宅で使われている木材はスプルース集成材でした。俗に言うホワイトウッドです。
ホワイトウッドは耐朽性に難があり、シロアリにも非常に弱いという性質があり、過剰に毛嫌いする人も多いのが現状です。
ホワイトウッドに関しては多くの暴露実験(屋外に放置したり)が行われており、耐朽性・防蟻性の脆弱さが実証されています。
ただ、実験は屋外に放置された状態ですので、建材として使われた場合にも同じようになるとは言えません。檜や杉より耐朽性・防蟻性に劣るというのは事実かもしれませんが、建材として使用できないほど悪いものなのかという論争は今も尽きません。ただ、ハイブランドであるにもかかわらず、耐久性に難がある木材を使用しているということは認識していなければなりません。
ホワイトウッドが構造材として不合格であるという証明はできませんが、積水ハウスでも檜や杉にオプション費用を払って変えることはあっても、檜を使っているメーカーで「お金を払うのでホワイトウッド使ってください」と要求する人はいないでしょう。それが間接的な証明になっているのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、ホワイトウッドの耐朽性・防蟻性の低さが住宅に悪影響を及ぼし、それが顕在化するかはまた別の話です。
さらに、積水ハウスは構造体に対して30年間の保証を行っていますが、明記されている保障内容ではスプルースが使われている柱の部分の主な点検内容ですが、傾斜・ひび割れ・欠損です。
床材はシロアリ被害が、小屋組みには腐食が点検項目に明記されていましたが、柱に関してはありませんでした。柱はどちらの被害も絶対に受けないという自信があるということなのか、はたまた明記されていないだけで保証されるのかは分かりません。
住宅瑕疵担保責任履行法では柱の腐食も含まれていますが、それは10年間の話で、それ以降は積水ハウスが独自で保証をしているわけです。保証内容の裁量権は積水ハウスにあります。
これは、どのハウスメーカーでも言えることですが、30年の初期保証=安心とは言い切れないのかもしれません。積水ハウスをつるし上げるような内容になりましたが、それほどスプルースを構造体に使用することに対しての、ネガティブな意見が多いのです。
ただ、積水ハウスの良いところは木造でありながら、柱と基礎を直接連結している点です。
通常は土台を挟んで柱を立て、そこにアンカーボルトを引き寄せ金物によって柱に固定します。土台の役割としては、基礎の水平精度を補うこと、また、地面から上がってくる湿気から柱を守ることです。
強度の観点から言えば直接連結のほうが優位性があります。直接連結の木造住宅は、積水ハウスの専売特許というわけではありませんが、その工法を採用しているハウスメーカーは少ないので、耐震性に優れた工法といえるでしょう。しかしながら、強い柱を使用したからといって強い家になるとは限りません。一般的な軸組工法と同じような柱の位置・本数で建築した場合は積水ハウスのほうが強い家になります。しかし、この柱が強いというのが両刃の剣で、柱・壁が強くなることで本数や壁面積を減らし、窓などの開口部に割り当てることもできますし、間取りの自由度も上がります。
積水ハウスは、強い家を作るというよりは、強い構造を利用して自由度の高い家を作る傾向にあります。そうなると、結局強さは一般的な軸組工法と同じくらいになってしまいます。
しかしながら、どのような工法でも構造計算された数値が信用すべき指針となります。高強度な柱でも本数が少なければ、耐震性の差は縮まります。
また、地震に対する強さというのは工法だけではなく、間取りによっても左右されます。
強い家の条件は
①凹凸の少ない単純な形
②大空間がない間取り
③耐力壁の配置バランス(南面少・北面多などは不利)
④1階と2階で柱の直下率が高い
⑤耐力壁の直下率が高い・または市松状
などです。
積水ハウスの強みとしてはやはり意匠設計があります。つまり、カッコいい自由度の高い外観や間取りを得意としています。
裏を返せば、自由度の高い家というのは強い家の条件をある程度無視しているということになります。つまり、強度的には弱くなります。しかし、通常の状態が一般的な在来工法と比較して強い状態なので、それが可能であるということです。
加えて、積水ハウスの耐震等級は型式認定によるものなので、品確法の耐震等級3ということになります。耐震等級にはさらに上位の許容応力度計算に基づく耐震等級があります。とはいっても、許容応力度計算を行うハウスメーカーは一条工務店の2倍耐震の家のみであって、基本的にハウスメーカーは許容応力度計算をしません。それ自体に大きな問題があるとは思いませんが、シャーウッドの場合は特殊な工法になりますので、型式認定は秘匿部分が多く、それにより取得した耐震等級3がどの程度の強度を誇るものなのかは不明です。
そのため、シャーウッドであれば一概に耐震性に優れた家が建てられるというわけではありません。
ただ、積水ハウスは法改正に先立ち、許容応力度計算をしているとの情報もあるため、現在(2024年4月)がどのような状況になっているのかは不明です。許容応力度計算を全邸で行う場合、型式認定のメリットがなくなってしまいますが、それでも計算しているのかは要確認です。
C値は結局いいのか悪いのか
シャーウッドのC値を調べると、2前後、1を切ればいいほうという情報があります。
その一方で、0.2や0.09など驚異的な数値をたたき出してる施主様もいたようです。
情報から考えるに、0.2や0.09は仕様ではなく施主様のこだわりという側面が大きく、シャーウッド自体の性能と評するのはいささか疑問が残ります。
ただ、それだけのポテンシャルを秘めているのは事実ということですので、気密性はS評価ということにします。
これであれば、第一種換気を堂々と導入することができます。むしろここまで出来たのであれば第一種が望ましい気がします。ただ、第一種換気はダクトの清掃方法が確立されていないため、築年数が経過した後に、同等の換気性能が確保できるのかということには疑問が残ります。
そして、C値は完成後の実測値です。どちらの換気システムを採用するかは着工前に決めなくてはなりません。いいC値がある一方で、悪い数値の情報が散見されるのは導入を検討するにあたっての不安要素になります。
気密施工がどれほどまでされるものなのか、事前に確認する必要があるでしょう。
断熱性も高い仕様がある模様
断熱仕様でスーペリア仕様というものがあるらしく、情報によるとUa値0.23ということで、あの一条工務店を凌ぐ数値となっております。
しかし、シャーウッドでスーペリア仕様を採用した施主様のブログによるとUa値は0.38程度。50㎜以上の外張り断熱を付加したのなら、いくら何でもこれはあり得ません。
サッシの性能も樹脂サッシと比べると悪いですが、樹脂のトリプルに変更したところでせいぜいUa値は0.03低下する程度です。
そもそも、0.38程度であれば
天井 ブローイング400㎜
壁 グラスウール120㎜
床下 ボード系100㎜
で十分達成可能です。スーペリアは300万程度の増額との情報があったので、この程度でそこまで取られたらたまったものではありません。仮に外張り付加断熱だとしても高すぎますし、数値が悪すぎます。
0.38という数値が事実なら、断熱という点では積水ハウスはまだまだ遅れていると言えるでしょう。
陶板外壁って結局はサイディング
積水ハウスのオリジナル外壁「ベルバーン」とは、陶器の板に釉薬(ガラスコーティング)を施した外壁材です。
ガラスでコーティングされているため、高い耐水性を確保しており、再塗装なども基本的に不要なためメンテナンス費用が掛かりにくい外壁材とも言えます。
しかしながら、言い方を変えれば再塗装がいらないサイディングです。しばしばタイルの上位互換として語られますが、目地は発生しますし、ボードの形状がくっきり見えることもしばしばあります。
タイルを採用した場合は目地がありませんので、メンテナンス性においてもベルバーンを凌いでいます。意匠についても施釉タイルは普通にありますので、ベルバーンの優位性があるというのは理解できません。下地がない分、重量が減少するため、耐震性の向上という意味でなら優位性はあるでしょう。
仮にベルバーンがタイルの上位互換だとして、標準的な2丁タイルや高級なシームレスタイル(千陶彩など)を採用すればベルバーンより価格が安くなるというのであれば、積水ハウスの評価を良いほうに改めなければならないとも考えています。
とはいえ、陶板も高級な外壁であり、メンテナンス費用が窯業外壁と比較して抑えられることは紛れもない事実です。ただ、目地のメンテナンス費がかかりますので積水ハウスの外壁評価はA評価でしょう。
積水ハウスの3種の神器
①ベルバーン
②デザイン基礎
③基礎ダイレクトジョイント
④ブランド力
4つになってしまいました。鉄骨で挙げた3つにさらに木造でありながら、軽量鉄骨に近い構造が積水ハウスの強みと考えられます。
他にも大和ハウス・住友林業・SE工法などもでも近い性質がありますが、希少性という点で3種の神器に認定です。